労働基準法関係 妊産婦の保護 産前休業 産後休業
育児・介護休業法(育介法)関係 産後休業中のパパの育児休暇 不利益取扱いの禁止
健康保険関係 出産手当金 (家族)出産育児一時金 被扶養者(異動)届の提出
社会保険料(健康保険料等+厚生年金保険料)の免除関係
助成金関係
労働基準法関係
妊産婦の保護
① 妊娠中の女性が軽易な業務への転換を請求した場合は、使用者は応じなくてはなりません(労基法§65Ⅲ)。
しかし、適当な転換先業務が無い場合、新たに軽易な業務を創設する義務まではないとされています(S61・3・20基発151号等)。
② 妊産婦(=妊娠中の又は産後1年を経過しない女性)が請求した場合、使用者は時間外労働(※)・休日労働・深夜労働させてはいけません(労基法§66)
※ 変形労働時間制における40時間/週・8時間/日を超える部分の労働を含みます
※ 管理監督者である妊産婦が請求した場合は、同法§66のうち深夜労働のみ適用(=管理監督者であっても、請求があれば深夜労働はさせられない)があります
③ 妊娠中の女性が、母子保健法の規定による保健指導又は健康診査を受けるため、下記の通院休暇(例外⇒医師・助産師が異なる指示をしたとき)を申し出た場合は、事業主はそのために必要な時間を確保できるようにしなくてはいけません(均等法§12)。
・妊娠23週まで=1回/4週間
・妊娠24週~35週=1回/2週間
・妊娠36週~出産まで=1回/1週間
④ 事業主は、③の保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるよう、勤務時間の変更、勤務の軽減等必要な措置を講じなければなりません(均等法§13)。
産前休業
6週間(多胎妊娠は14週間)以内に出産予定の女性は、休業を請求することができます(労基法§65Ⅰ)。
できます=権利なので、請求するかしないかは自由ですが、請求があった場合は、使用者はこれを拒むことはできません。
(なお、産前産後期間を計算するには、協会けんぽの「産前産後期間計算ツール」が便利です。)
また、産前産後休業中の賃金については法令上の決まりがないため、賃金を支払うか否かは事業主の任意となっていますが、この点は通常、会社の就業規則に定められていると思います。
(後述の「健康保険の出産手当金制度」などもあるため、支給されない例が多いとは思います。)
出産手当金の支給率が(対賃金比)2/3であること、また所定労働時間などが短いため健康保険に未加入のパートさんなどであれば、有休を使うことに意味も出てきます。
産前休暇も有休もともに「権利」であるため、産前休暇や有休をどのように行使するかは女性側の任意と考えられること、また、そもそも請求されれば必ず産前休業を与えなければならない期間において、(有休を請求されたからと言って)使用者が時期変更権を行使することも微妙なことから、はっきりした判例や通達は見当たりませんが、有休は認めるのが適当とは考えられます。
出産日当日は、産前休業に含まれます(S25・3・31基収4057号)。
なので産後休業は、出産日の翌日から(原則)8週間となります。
産後休業
使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはいけません(労基法§65Ⅱ)。
いけません=義務なので、産後休業は請求しなくても当然に休業となります。
ただし、医師が支障がないと認めた業務について、産後6週間を経過した女性が請求した場合は、就業させることができます(同項但書)
育児・介護休業法(育介法)関係
産後休業中のパパの育児休暇
ママの産後休業期間内においてパパが育休を取得した場合、パパはいったん職場復帰した後でも再度育休を取得できることとなっています。
育休はややこしいので、次のページ でまとめます。
不利益取扱いの禁止
事業主は、妊娠・出産・産前産後休暇の取得等、あるいは育児休業取得等を理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはいけません(均等法§9Ⅲ・育介法§10ほか)。
【平成29年1月~】 不利益取扱いの禁止に加えて、職場において、妊娠・出産・育児休業等を理由とする就業環境を害することがないよう防止措置(労働者への周知・啓発、相談窓口の整備等を想定)を講ずることが義務付けられる予定です。
健康保険関係
出産手当金
出産予定日(※)以前42日(多胎妊娠=98日)から出産の日後56日目まで(=労基法の産前産後休業の期間)の間の、会社を休んだ期間は出産手当金が支給されます。
※ 実際の出産日が予定日より早まった場合は「(予定日ではなく)実際の出産日を基準」に支給されます。
この場合は、結果的に産前休業が42日未満となりますが、出産手当金は「会社を休んだ期間」を要件とするため、42日分未満の支給となる場合があります。
出産手当金の額は標準報酬日額の2/3の額 (日額早見表はこちら) となりますが、この間、事業主から報酬が受けられる場合は、その差額の支給となります。
標準報酬日額は、標準報酬月額を30日で割った額ですが、その標準報酬月額とは、原則として毎年4~6月の3か月間に受けた報酬を平均したもの(=定時決定)を、等級(健康保険は47等級、厚生年金保険は30等級)に当てはめたもので、毎月の社会保険料や保険給付を算出するときの基準となる額のことを言います。
(参考)愛知県の保険料額表は こちら
報酬月額の幅、等級ごとの標準報酬月額・日額、保険料額などが確認できます。
(家族)出産育児一時金
出産は傷病(病気)ではないとの考え方から、出産費用については、(異常分娩時の処置等を除いて)健康保険の適用はありません。
その代わりに、出産費用については、出産育児一時金(被保険者ご本人が出産する場合)、家族出産育児一時金(扶養家族である配偶者等が出産する場合)が支給されます。
一時金の額は42万円(医療機関が産科医療補償制度未加入の場合等は40万4千円(H27.1~))となります。
受給方法は、協会けんぽ(健保組合)から医療機関等に直接支払う「直接支払制度」が多くの産科で採用されています(手続きは医療機関等で確認・選択します)。
また一時金支給までの間、一時金の8割相当額まで借りられる「出産費貸付制度」もあります(協会けんぽ)。
被扶養者(異動)届の提出
出産後には、子どもを健康保険の扶養に入れる手続きが必要となります。
提出時期は被扶養者に異動があった日(=出産日)から5日以内となっています。
一般的な流れは以下のとおりとなります。
① 出生届(証明欄)に産科で証明してもらう
② 出生届に記入した後(できれば住所地の ※1)役場に提出
③ (できればその場で)続柄の入った世帯全員の住民票の写し(マイナンバー入り ※1)をもらう
④ 住民票の写しを会社の担当に提出
⑤ (④を添付資料として)会社から年金事務所(健保組合)あて「被扶養者(異動)届」を提出
⑥ (後日)会社経由で子どもの健康保険証を受け取る
ただし、里帰りして出産する場合などは、戸籍謄本や出生届受理証明書などで代用する場合もあると思われますので、会社の担当にご確認いただきながら手続きを進めるのがよいと思います。
※2 乳幼児医療証や児童手当は、別途住所地の役場にお尋ねください。
社会保険料(健康保険料等+厚生年金保険料)の免除関係
H26.4.30以降に産前産後休業が終了する被保険者から、産前産後休業期間中の社会保険料が免除される制度が創設されています。
免除期間中でも被保険者資格に変更はありません。
免除期間は、産前産後休業開始月から終了予定日の翌日の月の前月までとなっています。
「産前産後休業取得者申出書」は、産前産後休業期間中に提出することとされていますが、この申出書を提出しない限り、(当該被保険者にかかる)月々の保険料の納付が免除されないため、休業開始後すみやかに提出するのがよいでしょう(但し、提出が遅れる分には後で精算されます)。
助成金関係(事業主さま向け)
事業主が中小企業の場合で、ご本人さまが育児休業を取得する場合、両立支援等助成金の2つのコース「代替要員確保コース」「育休復帰支援プランコース」に該当する可能性があります。
ご本人さまが産前休業に入られる前のプランづくりが必要となったりしますので、早めのご検討をお勧めいたします。