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3 産後休業・育児休業終了~職場復帰以降

 労働基準法関係

 育児時間

 生後1歳未満の生児を育てる女性は、1日に2回それぞれ少なくとも30分の育児時間を請求できます(労基法§67Ⅰ)。
 ただし、1日の労働時間が4時間以内の場合は、1日に1回与えればよいとされています(S36・1・9基収8996号)。

 

 妊産婦の就業制限(再掲)

 ② 妊産婦(=妊娠中の又は産後1年を経過しない女性)が請求した場合、使用者は時間外労働(※)・休日労働・深夜労働させてはいけません(労基法§66)
 ※ 変形労働時間制における40時間/週・8時間/日を超える部分の労働を含みます
 ※ 管理監督者である妊産婦が請求した場合は、同法§66のうち深夜労働のみ適用(=管理監督者であっても、請求があれば深夜労働はさせられない)があります。

 

 育児・介護休業法(育介法)関係等

 所定労働時間の短縮措置(短時間勤務制度)

 事業主は、3歳未満の子を養育する労働者(日々雇用者を除く)が希望すれば利用できる短時間勤務制度を講じなければなりません(育介法§23Ⅰ)。
 この措置には、1日の所定労働時間を原則として6時間とする措置を含まなくてはいけません。
 ※ 子が(3歳以上)小学校就学前の期間は、この所定労働時間の短縮措置は、事業主の努力義務となります。

(労使協定で所定労働時間の短縮措置の対象外と定められる範囲)
・ 継続して雇用された期間が1年未満
・ 所定労働日数が2日以下/週
・ 業務の性質・実施体制に照らして、短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる業務に従事する者(この場合は、フレックスタイム制度、時差出勤制度、託児施設の設置運営等の、いずれかの代替措置が必要)

FAQ 「そもそも所定労働時間とは何ですか?」

 就業規則等により、例えば労働時間が9時~17時(12時~13時まで休憩)までと決められている場合、17-9-1=7時間の部分を所定労働時間と、一方、労基法で定める8時間/日・40時間/週(労基法§32の原則)を上限とするものを法定労働時間と言います。

 なので上記の例で9時~20時まで残業したような場合は、17時を超える労働の部分は所定外労働18~20時の部分は法定外労働となり、その法定外労働となる18~20時については25%の割増賃金が必要という考え方になります(労基法§37Ⅰ)。
 ※ 時間外労働をさせるのに必要な36協定(労基法§36Ⅰ)は結ばれている前提でのお話しです。

FAQ 「所定労働時間の短縮措置に重ねて、労基法の育児時間を取得することは可能ですか?」

 育児時間は、労働基準法で定められた権利なので、所定労働時間の短縮措置を利用しているからといって、育児時間を取得できないとすることはできません。

 ただし、育児時間による短縮分を含めて(所定労働時間の短縮措置を)1日6時間労働と定めることは可能です(厚労省Q&Aより)。

 

 所定外労働の制限

 事業主は、3歳未満の子を養育する労働者(日々雇用者を除く)が請求した場合は、所定労働時間を超えて労働させてはいけません。
 ※ 子が(3歳以上)小学校就学前の期間は、この所定外労働の制限は、事業主の努力義務となります。

 ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、これを拒むことができます(育介法§16の8Ⅰ)。

(労使協定で所定外労働の制限の適用除外と定められる範囲)
・ 継続して雇用された期間が1年未満
・ 所定労働日数が2日以下/週

 この所定外労働の制限及び(次項の)時間外労働の制限は、ともに1か月以上1年以内の連続した期間を請求できます(請求回数の制限無し)が、両者の期間は重複してはいけません(育介法§16の8Ⅱ・§17Ⅱ)。

FAQ 「事業の正常な運営を妨げるかどうかの判断基準は?」

 その労働者の所属する事業所を基準として、その労働者の担当する作業の内容、作業の繁閑、代替要員の配置の難易等諸般の事情を考慮して客観的に判断することとなります。(厚労省「育児・介護休業法のあらまし」より。以下の「時間外労働の制限」「深夜業の制限」と共通)。

 

 時間外労働の制限

 事業主は、小学校就学前の子を養育する労働者(日々雇用者を除く)が請求した場合は、24時間/月、150時間/年を超えて(法定)時間外労働をさせてはいけません。

 ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、これを拒むことができます(育介法§17Ⅰ)。

(時間外労働の制限の適用除外 ※ 労使協定は不要)
・ 継続して雇用された期間が1年未満
・ 所定労働日数が2日以下/週

 

 深夜業の制限

 事業主は、小学校就学前の子を養育する労働者(日々雇用者を除く)が請求した場合は、深夜(22時~翌5時)に労働をさせてはいけません。

 ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、これを拒むことができます(育介法§19Ⅰ)。

 この深夜業の制限は、1か月以上6か月以内の連続した期間を請求(回数制限無し)できます(育介法§19Ⅱ)。

(請求できない場合)
・ 継続して雇用された期間が1年未満
・ 所定労働日数が2日以下/週
所定労働時間の全部が深夜である
深夜において、常態として保育可能な16歳以上の同居の家族がいる

 

 子の看護休暇

 小学校就学前の子を養育する労働者(日々雇用者を除く)は、けがや病気をした小学校就学前の子の看護、又は子に予防接種、健康診断を受けさせるための休暇を、年次有休休暇とは別に子1人の場合で年5日/1年度(子2人以上の場合は年10日)を限度に取得できます(育介法§16の2Ⅰ)。
 【平成29年1月~】 半日(所定労働時間の2分の1)単位の取得が可能(ただし1日の所定労働時間が4時間以下の場合を除く)となる予定

(労使協定で子の看護休暇の対象外と定められる範囲)
・ 継続して雇用された期間が6か月未満
・ 所定労働日数が2日以下/週

 

 社会保険料関係

 産前産後休業・育児休業終了時の標準報酬月額の変更

 制度の趣旨

 産前産後休業や育児休業の間は、社会保険料(健康保険料等+厚生年金保険料)は申出により免除されますが、産前産後休業や育児休業が終了した時は、休業終了日の翌日の属する月の分から、社会保険料の支払いを再開しなくてはいけません。
(標準報酬月額の定時決定時に休業していた人については、休業前の標準報酬月額がそのまま据え置きとされる取扱い(=修正平均)となっています。)

 その一方で、職場復帰以降は、このページで見てきた所定労働時間の短縮措置などにより、労働時間が減少する可能性があり、その場合は(休業前と比べて)収入減となることが考えられます。

 そうすると(職場復帰以降に)収入に比べて割高な社会保険料を支払うことになってしまうので、これを緩和するために、職場復帰後に収入(報酬)が1等級以上下がった場合について、特例的に標準報酬月額の減額変更が認められています。

 ※「標準報酬月額」「定時決定」「等級」の意味がご不明な場合は、「1 妊娠~産前産後休業まで」の出産手当金の欄の説明をご参照ください。

産休・育休終了時の月額変更 イメージ図

産休・育休終了時の月額変更 イメージ図

 

 手続き

 産前産後休業や育児休業を終了した日の翌日が属する月から3か月間(暦月)に受けた報酬の総額を3で割った額(原則)を等級に当てはめ、休業前の標準報酬月額とを比較して、1等級以上の差を生じた場合に、終了日の翌日が属する月から4か月目に、「産前産後休業終了時報酬月額変更届」又は「育児休業等終了時報酬月額変更届」を年金事務所等あて提出します。

 なお、産前産後休業を終了した日の翌日から引き続き育児休業をした場合は、「産前産後休業終了時報酬月額提出届」は提出できません。この場合は、育児休業等の終了を待って「育児休業等終了時報酬月額変更届」のみを提出する取扱いとなります。

FAQ 「この終了時特例と随時改定の違いが、いまいちよく分かりません。」

 随時改定は、①固定的賃金に変動あり、②(変動月以後)3か月とも支払基礎日数が17日以上、③(変動月以後の)3か月の平均と従前との差が2等級以上、などが要件となりますが、この終了時の特例は、①固定的賃金の変動は問われない、②(支払基礎日数は)1月でも17日以上(パート特例あり)あればよい、③17日以上ある月の平均と従前との差が1等級以上あればよい、と要件が緩和されています。

 このため、(一時的な降給や短時間社員への転換などにより固定的賃金を定めなおすことなく)労働時間減少部分を、欠勤の例などにならって控除するような場合や、(変動は暦月で見るため)復帰月が17日未満の勤務の場合でも対象となり得るなど、より有利な改定制度となっています。

 

 厚生年金保険関係

 養育期間標準報酬月額特例の申出

 制度の趣旨

 申出があれば、将来の厚生年金の受給において、子の養育開始以降で標準報酬月額が低下した月について、低下する前の標準報酬月額を使用して計算しますという制度となります。

 原則として、3歳未満の子の養育開始(=子の誕生日)月から3歳到達日の翌日の月の前月までの間、子の養育開始月の前月の標準報酬月額を下回る各月について適用されます。

 

 前項の「(産休・育休)休業終了時の標準報酬月額の変更」が適用されるような場合に、この「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書」を合わせて提出するのが典型的な申出例となります。

 しかしこの特例は、子が0~3歳未満の間であれば、父母の別や、報酬減額理由の如何を問わず適用(=育休明けの短時間勤務による収入減等に限定されない)され、また、申出日の前月までの2年間についても遡って適用されますので、産後休業や育児休業が終了する際などに、対象労働者(夫婦とも)の該当・非該当を一律点検するなどの事務ルール作りが望まれます。

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