今日は、建設事業(一括有期事業)の年度更新に関連して、またカリカリするパターン(苦笑)に遭遇したので、ちょっと怒りの投稿です・・・

 プロ野球の選手が凡ミスなどすると「高校野球以下」などと批判を浴びますが、そういう感覚に近いような内容でして、ぜひ建設事業主さまに読んでいただきたいです。

 

 労働保険と労働保険料の考え方

 いまちょうど労働局の年度更新の時期ですが、一括有期事業にかかる労働保険料の考え方が分かりにくい面があるので、まずは整理したいと思います。

 その基本的な考え方としては、労働保険(労災+雇用保険)は、労働者が存在する場合に成立させる必要があって、その際に支払うべき労働保険料は、基本的にその労働者の賃金を基礎として計算することとなっています。

 ここでいう労働者とは「雇用されて働いている人」の意味であって、例えば事業主さま自らが、一人親方さんばかり数人を引き連れて行うような工事であれば、“(労働保険で言うところの)労働者が存在しない” ため、建設事業の現場労災(≒工事にかかる部分の労災)としては、労災保険を成立させる義務は無いですし、そもそも(そのままでは)労災の適用を受けることもできません。

(この場合は、中小事業主や一人親方の特別加入の手続きをすることにより、その適用を受けることができますが、雇用保険には入れません。)

 

 この現場労災とは、事業所を単位として労働保険を成立させる他の事業とは異なり、工事を単位(一定の条件のものを一括有期事業としてまとめられます)として発生させる考え方であって、これを元請事業者に対してのみ、その成立や労働保険料の納付の義務を負わしています。

 ここで元請とは「工事の発注者から直接仕事を請け負う」ことを言いますので、したがって下請事業者は現場労災を成立させる義務等はありません(≒成立させる義務が無いことは、申告の義務も無いことになります)し、その点は年度更新のパンフレット↓でも、はっきりしています。

労働保険,年度更新,建設業,一括有期事業

 

 以上をまとめますと、現場労災は「元請事業主」が「自ら雇用する労働者を働かせる場合」又は「(仮に自ら雇用する労働者はいなくても)下請事業主に労働者がいる場合」について、その成立義務が発生することとなります。

 これを裏返して言うと、下請事業主は、当該工事に関して現場労災を成立させる義務等は無いこととなりますし、また元請事業主であっても、上記でいうところの労働者が1人もいない工事であれば、これまた成立させる義務等は無いこととなります。

 元請工事も下請工事も行う事業主さまであれば、通常は何らかの現場労災が成立するのが一般的なので、ちょっとややこしいところではありますが、少なくとも(現場労災について)下請としての請負金額まで算入して労災保険料を支払いなさいとはなっていないのです。

 

 プチ切れる理由

 そしてなぜ私がプチ切れるかというと、それまで他でお願いしていたというお客さまからお声がかかって行ってみますと、顧問料や年会費等はしっかり取られていた上に、さも当たり前のように、下請工事や労働者を使っていない工事を全て(労災保険料の)対象として計算している過去の書類を見せられて、目が点になることがあるからなのです((( ;゚Д゚)))

 あ、この瞬間には、お客さまに対してプチ切れていると誤解されないように振舞う必要もあるわけですが(爆)

 

 年度更新のパンフレット↓でも、「元請工事がない場合は、総括表の提出は必要ありません」と、ちゃんと書いてあります。

労働保険,年度更新,建設業,一括有期事業

 

 これをもっともっと親切に書くとしたら、例えば「元請工事にかかる請負金額のみを記入してください。(下請工事は記入も必要なければ、労災保険料納付の対象ではありません。元請工事が全く無い場合は、総括表そのものの提出も必要ありません。)」などとなるのかもですが、ここの意味はそういうことです。

 そうして、支払う義務の無いものを毎年払い続けると、その累計額は恐ろしいことになります((( ;゚Д゚)))・・・ただでさえ、建設事業の労働保険料率は高い訳ですから。

 

 提出代行にせよ事務代理にせよ、提出をお願いされて報酬をいただく以上、特に支払いの大きくなる年度更新については、「支払うべきものは支払う、支払う必要の無いものは除外する」といった精査が、普段以上に必要ではないか?と思います。

 それは「下請工事まで入れてたりしないですよね?」「従業員さんと言える方を使われていましたか?」等とお声をかけるだけでも分かりますし、それもしていないなどは、後々に賠償請求されても文句を言えないと思います。

(もっとも賠償請求されたような場合は、『パンフレットをお渡ししてましたよね?お読みにならなかったんですか?』などと反論するのかもですが、パンフレットの小難しい説明を自力で読んで理解しておいてください…というのも、それはそれで不親切でしょう。)

 

 あぁそういえば・・・上記のように下請工事や労働者を使っていない工事を全て計算対象としたあげく屋外の35建築事業(労災保険料率 11/1000)を適用すべき事業主さまに、屋内工事(38既設建築物設備工事業)の率(15/1000)を適用していた、最凶の組合までありました。

 どれだけ無駄に払わせてんねん!!(怒)って話しですが、これが勉強不足の故なのか、過失なのか、故意なのか、までは私にも分かりません。

 実は労働保険事務組合には、集めた労働保険料に応じて国から報奨金が戻ってくるという仕組みがあるものですから、その報奨金の微々たる増額を狙って故意でやっているなどではないことと願うばかりです。

 

 まぁこれを他山の石として、よりしっかりした仕事ができるようになりたいと思っていますが、この記事で引っ掛かりを覚えられるような建設業の事業主さまは、一度労働局や監督署で納得のいくまでお話しを聞かれてみることをお奨めしたいと思います。

 

 ではまた、ご訪問ありがとうございました (^^)/