退職金制度の導入

 今年の初め、「日本老年学会」なる団体から「高齢者の定義を、現行の65歳から75歳以上に見直すよう」提言があったことが報じられました。

 この報道を聞いた多くの方が『将来、年金の支給開始年齢が引き上げられそう』と思われたのではないでしょうか?

 誰もがその自由な意思でリタイアメント時期(第二の人生の開始時期)を判断できるようにするためにも、会社さんにおいて「退職金制度」を構築することは、従業員さん・事業主さんのどちらにとっても、とても大事なことです。

 

 ちょうどこのお盆には、通常期より時間が確保しやすいこともあり、とあるお客さまと退職金制度の導入について議論しておりました。

 私が通常、お客さまにお勧めするのは、①中退共、②小規模企業共済、③選択型確定拠出年金(DC)、④養老保険などからの、一択もしくは組み合わせとなります。

 これら各制度のメリット・デメリットをよ~く比較検討されて、お客さまに最適なものを導入されるのがベストと思います。今日は各制度について、思うところを自由気ままに書いてみますので、ご参考いただけますと幸いです。

 ①中退共(中小企業退職金共済)

 法律に基づいて運用されていますので、安心感は一番と思います。掛金は全額損金となりますし、初期には掛金助成制度もありますので、これも魅力ですね。

 掛金月額の上限が 30,000円/人となりますので、『見込み退職金額が想定・イメージする支給金額に達するかどうか?』、ここもチェックしておく必要があります。もし不足するようでしたら、他を選ぶか、もしくは他と併用することとなるでしょう。

 事業主さんから見た場合のデメリット?は、キャッシュアウト(掛金引き出し)ができないこと、また支払いは(共済機構から)従業員さんに直接支払われることでしょうか。

 例えば、事業主さんと従業員さんが喧嘩して辞めるような場合で、「あんな奴に払ってやりたくない!!」と思っても、原則それはできません。(こういうご相談が、意外と件数あるのです ^^;)

 これは裏返せば、従業員さん側にはメリットとなりますけども。

 

 ②小規模企業共済

 事業主さんや役員さんは、①の中退共には加入できませんので、この②小規模企業共済(掛金 1,000~70,000円から選択)がその加入候補となります。

 詳細は税理士さんにお尋ねいただければですが、パンフ中のシミュレーションでは、例えば、課税所得金額が600万円×掛金月額3万円の組み合わせで、109,500円の節税とあります。

 これはすなわち「年間25万円の支払いで、36万円貯まっていく」ということですので、生活に困らないなら、やらないともったいない感はあります。

 1年分を一括で支払うと、その全額がその年の所得控除になるとされていますので、余裕があれば一括払いも活用したいです。

 ただし、小規模企業(≒正社員20名以下、サービス業・商業は5名以下)であることという縛りがありますので、ここは要確認です。

 

 ③選択型確定拠出年金(DC)

 今年の1月から導入された個人型の「イデコ(iDeCo)」が話題となりましたが、会社さまにお勧めするのはこの選択型DCです。

 どこが違うかと言いますと、「イデコは(社会保険料や税を控除された後の)手取りから個人で積み立てる」「選択型DCは(従業員さん自身が積み立てを選択する必要はありますが)会社の損金として直接積み立てる」ことから、仮に同額を積み立てた場合でもより多くの手取りが残ること、

また、その積立上限月額が、イデコは23,000円、選択型DCは55,000円と、積み立て枠が大きいことです。

 

 デメリットとしては、原則60歳までは一切引き出せないこと、従業員さんが自ら運用する必要があること、そのために事業主さんは(従業員さんに対する)投資教育を行う義務があること、などでしょうか。

(ですが、従業員さんに投資教育をする機会を設けること自体、福利厚生の上からはプラスと考える発想もあります。)

 相談員時代に、「ある会社さんが良かれと思って選択型DCを導入し、従業員さんが株式中心のイケイケで運用していたところ、リーマンショックだか東日本大震災だかのあおりを受けて、多くの方が半額くらい溶かした」という話しを聞いたことがあります。

 そういうリスクには十分注意する必要はありますが、実は統計的には、多くの方が手堅く定期預金で運用しているとは言われています。

 

 あとは「大半の金融機関において、中小企業向けには企業型DCを取り扱っていない」という現実があります。

 これはある程度の人数以上で扱わないと、スケールメリットが生じないのでペイできないという事情のようですが、これを加入者1名からでも扱っていただけるのが、SBI証券さんとなります。

 

 ④養老保険など

 保険を活用する場合の、事業主さんにとっての一番のメリットは、ピンチの時にキャッシュアウトできる、すなわち掛金の範囲内で貸付を受けられるとか、解約できるとかだと思います。

 また保険ですので、契約初期から死亡・高度障害等の補償対象となることも(望まれる事態ではありませんが)メリットと言えばメリットです。

 その代わり、(これは保険の部分の対価と言えると思いますが)満期時の受け取り想定額が、払込済みの総額からは幾分マイナスとなることがあります。(このため保険会社さんによっては、この点を補完するため外貨建ての商品を用意している場合があります。)

 また掛金については、その半額が損金となる福利厚生プランが人気のようですが、設計次第で他の組み合わせもできますので、保険会社の方によくお話しを聞かれてご判断されると良いと思います。

 

 以上、ザクっとしたご説明となりましたが、イメージはつかんでいただけたのではないかと思います。

 

 受け取り時のお話し

 上記は、退職金制度の入り口、すなわち「導入時の設計」のお話しですが、私はその出口、すなわち「受け取り時を想定」しておくことも、とても大事と思います。

 それはもちろん、退職所得控除とか公的年金等控除とかの話しを含みますが、それは長くなるのでまたとして、今日は運用のこと、ずばり「低金利の円資産のみで積み立てること」について、私見を述べてみます。

 

 円資産のみで運用する場合は、それは円資産としては溶けないかもですが、もし物価がそれ以上に上昇した場合や、円自体の価値が下がった場合、実質的に目減りするリスクがあります。

 最終的にはお客さまのご判断となりますが、私見としては、例えば、上記③選択型確定拠出年金(DC)の場合であれば「債券を円建てと外貨建ての両方で運用する」、あるいは④「保険でドル建て商品を選ぶ」といったことも、リスクを分散させる意味で良いのではと思っています。

 

 またちょうど最近のこと、知り合いの先生からお誘いを受けまして「暗号通貨(一般に仮想通貨と呼ばれるものです)セミナー」を聞いてきたのですが、これもリスク分散の対象となり得ます

 これは既にキプロス危機の際、富裕層の資産がビットコイン(BTC)になだれ込んだといった歴史的事実もあるようです。

 これは私も、地球上のどこかで地政学リスクが発生するたび、資産の逃避先として国境を持たない(≒世界のどこでもそのまま使える)暗号通貨が選択されるのは当たり前と思います。

 私が富裕層でもそうします・・・そうではないので全く関係ありませんが(大汗)

 暗号通貨の話しは、私のアンテナにビンビンに反応いたしましたので ^^;、以下思うところを書いてみますので、もう少しお付き合いいただけますと幸いです。

 

 暗号(仮想)通貨のお話し

 暗号通貨と聞いて『何だか怪しい!?』と思われる方が、今はまだ非常に多いと思います。

 先日も岐阜でビットコイン絡みの殺人事件が報道されたりして、さらに怪しさが倍増しましたよね ^^;

 

 ですがこれまでも(不幸なことですが)お金絡みの詐欺事件や窃盗・強盗事件などは多く発生してきました。

 今回の事件はビットコイン絡みの投資話の争いが原因のようですし、ここで許されないのは犯罪者の行為であって、これまでも『お金の存在が悪いから事件が起きた!!』とは誰も思わないのと同様、『ビットコインが悪いから事件が起きた!!』などと考えるべきではないと思います。

 

 こういうものに巻き込まれないためにも、購入する際は「(株式などと同様に)自分で取引所に口座を作って、自分で入金して、自分で選んだ通貨を購入する」、これは基本中の基本ですね。

 またその購入対象通貨については、今年秋頃から仮想通貨取扱業者が登録制となるようですので、ここで登録された業者の取り扱う流通性の高いものから選択する方が無難であって、胡散臭い通貨やマイナーな通貨は避けるのが賢明と思われます。

 

 このお盆休みも利用して、私もかなり調べましたが、私個人の心証としては、異なる通貨間でも瞬時に送金できるシステムの構築・普及に取り組むRipple社の事業展開に驚愕を覚えました(その内容は膨大ですので割愛いたしますが)。

 そのRipple社とタイアップするSBIの北尾社長は「全銀ネットは消えてなくなる」と発言しておられます。

 Ripple社のシステムを活用することで、決済は(それが国際決済であっても)5~10秒以内に完結し、さらに暗号通貨XRPを併用することで、特に国際送金コストは60%減になるというのです。

 

 社労士業務の関連でいうと、例えば「お給料日が休日にあたる場合はその前日に支払う」などの扱いが一般的ですが、24時間365日稼動するそのシステム上では、今後はそのように扱う必然性も全く無くなります。

 そのうちに「(従業員さんから)お給料をビットコイン(BTC)やリップル(XRP)で振り込んで欲しいと言われたんですが、どうしたら良いですか?」なんてお問い合わせも出てくるかもしれません。

 これは私も、暗号通貨を労働基準法にいう通貨と解釈して良いかどうか、労働局さんに確認してみないと分からんです(爆)

 

 最後に、『5年後にはこうなっている!?』という個人的な予想を記して、数年後に検証したいと思います。
(ビットコイン(BTC)が190万円台の2017年12月12日に修正加筆)

1 その唯一無二の決済能力から、大本命◎リップル(XRP)は、ビットコイン(BTC)や○イーサリアム(ETH)を抜いて時価総額1位に君臨している(2017年12月12日現在は6位)。

2 今はブリッジ通貨と位置付けられている◎リップル(XRP)や、▲ビットコインキャッシュ(BCH)は、店舗での支払いなどで普通に使えるようになっている。

3 ◎リップル(XRP)・○イーサリアム(ETH)・▲ビットコインキャッシュ(BCH)などが、基軸暗号通貨となっていて、「暗号通貨建て」の投資信託も人気となっている。

4 2017年8月16日現在、1リップル(XRP)≒18円といった相場ですが、これが最低1桁、おそらく2~3桁は上がっている。
(万一溶けても生活に支障がない程度に、○イーサリアム(ETH)や▲ビットコインキャッシュ(BCH)、△ネム(XEM)にも分散させて少額ずつ購入&ガチホ推奨)。

5 そのおかげをもって、この事務所が綺麗な事務所に移転しているw

 5は半分ネタですが ^^; 投資はご自分でも良くお調べになった上で、自己責任でお願いいたしますね。

 

 ではまた、ご訪問ありがとうございました (^^)/