「正社員(or 無期パート)の募集に応募して採用されたのに、2か月契約しかしてもらえなかった」ってのも、よくご相談のあるパターンでして、今日はそれを書いてみます。
「2か月頑張れば正社員になれます!!」等と説明を受けるに至って、『それって話しが違うよね!?』と疑問を感じられる方からのご相談です。
2か月経った後に、正社員にしてもらえるならまだいいのですが、「あなたは(仕事のレベルが)まだまだだから」等と言われてさらに短期契約を繰り返すような例や、2か月経過する直前の時点で「あなたは今日までで結構だから」と突然雇止めされる酷い例までお聞きします。
なぜ2か月契約なのか・・・その理由は大きく2つあると思われます。
1つ目は、2か月以内の有期契約者は、社会保険へ加入させる義務が無いこと。すなわち、2か月分の社会保険料の会社負担分を節約する意図の場合があります。加えて『残るかどうか分からない人の事務手続きに手間をかけたくない』という考えまで含むかもです。
もう1つは、2か月以内の有期契約者については、労働基準法20条の解雇予告の適用が無いこと。これは一言で言えば、最初の契約を2か月にしておけば、会社が期待する水準になかった場合等に、解雇予告手当を支払うことなく辞めさせられるからです。(注1)
これはもう少しご説明しますと、基準法の解雇予告の適用が無いことに加えて、2か月の経過を待って契約満了の形をとる場合は、そもそも解雇にもならない、すなわち、①(早々に解雇する場合も含めて)予告手当の支払いが不要で、さらに②2か月満了まで待てば雇止めの形となるため、不当解雇を主張されるリスク(労働契約法16条)まで無くなるという “二段構え” の契約となっているのです。(注2)
注1 2か月を超える雇用契約や無期契約の場合は、仮に2か月以内に解雇した場合であっても、解雇予告手当を支払う義務があるのが基準法の考え方です。
注2 過去には「雇用契約に期間を設けた趣旨等が労働者の適性を評価・判断するためであるときは、特段の事情が認められる場合を除いて、試用期間と解することが相当」とした判例もありますが、(本件のような2か月契約の場合に)そのような主張を司法の場で争うことが現実的ではないと思われる面も鑑み、暫定的にこのように記します。
また、労働基準法15条2項では「明示された労働条件と事実(≒労働の実態)が異なる場合は、労働者は即時に契約解除できる」といった規定はあるのですが、今回の場合、異なっているのは「求人の内容 vs 労働条件」であって「労働条件 vs 労働の実態」ではないのですよね。
大日本印刷事件という有名な最高裁判決で「使用者による募集は、雇用契約締結に関する申し込みの誘引である」と、すなわち求人の内容がそのまま労働契約の内容となるのではなく、あくまで広告の意味合いにとどまるといった考え方が示されていますし、求人の内容と労働契約の内容が違うこと自体は、基準法の枠組みにおいては違反とはならないのです。
このように紐解いていくと、これは労働関係に特に詳しい人間が入れ知恵(苦笑)している可能性も含めて、“2か月契約の裏側” が見えてくるのです。
私自身の考えとしては・・・会社側には契約を2か月とするメリットはあるので、2か月契約そのものを否定する考えはありませんし、状況によっては、自分も事業主さんに勧める可能性も否定はしません。 ですがここの問題点は、求人の内容と労働契約が(最初の時点から)違っていること、これはやはり信義則に反するものと考えます。
正社員募集に応募して採用される場合は、正社員採用されるものと期待するのが当然と思います。最初は2か月契約としたいなら、求人にもそのように書くべきでしょう。
求人では応募してもらいやすいように正社員で募集しておいて、いざ契約の段となれば2か月契約を持ち出すのは “こっすい” やり方です。
入社段階でこんな騙しをしていては、『その会社で頑張れるか!?』といった士気の部分や、後々の信頼関係にも影響しそうです・・・私がそう思うのは、大好きな「鬼平犯科帳」の読み過ぎかもですが(爆)
さて、上記ではいったん「信義則に反する」と書きましたが、実は職業安定法5条の3において、労働者の募集を行う者等に対して、求人者等に対する労働条件の明示が義務付けられています。
上記のような事例があった際に、ハローワークの担当者の方と意見交換したことがあるのですが、「ハローワーク経由の求人であれば、指導できる事案となりますねぇ」とおっしゃっておられました。
(注:この記事では、契約期間の問題を取り上げていますが、募集は時給 1,200円 ⇒ 契約は 1,000円といった例も、同様に指導対象と思われます。)
ですので運悪くこのような求人に遭遇した際には、
① その会社の待遇や仕事などには魅力を感じるなら、『うるさい人間』とマークされないように ^^; 大人しく2か月働いて正社員を目指す、
② 納得いかない(辞めたって構わない)ような場合は、ハローワークさんに対し、会社を指導してもらう方向で相談する(ハローワーク以外であれば、その求人媒体に対して苦情を入れる方法も)、
もしくは折衷案として、
③ 正社員として雇ってもらえないことが確定した段階で、上記②の選択肢を検討する
のどれかってことでいかがでしょうか?
私などは結構、「あなたの後から応募する人が、あなたと同じ不愉快な思いをするので、ハローワークさんに指導を申し入れてみてはどうですか?」等と勧めちゃいますね、このパターンは。
いくら双方の法律知識に差があったとしても、超えちゃいけない線はあるはずです。
さて、週末の日曜はキャリコンの実技試験を控えるも、あれこれあってテンパってます・・・どうなることやら ^^;
ではまた、ご訪問ありがとうございました (^^)/